国家公務員の給与引き下げ強行に抗議する(談話 2012年3月1日付)をアップしました。

国家公務員の給与引き下げ強行に抗議する(談話)
2012年3月1日 全経済産業労働組合書記長 渡邉 忠一

1.2月29日、参議院本会議で、給与引き下げ法(国家公務員の給与改定及び臨時特例に関する法律)が可決成立した。全経済は、この法律が、何重もの違憲、違法の手続きを犯していること、大震災の救援、復旧、復興に献身している職員への配慮すらないなど内容的にも問題であること、復興財源のためと言うが、実際には民間企業にまで賃下げの連鎖を引き起こし、不況と税収不足を招き、復興の妨げになる恐れが大きいことから、強く抗議する。
2.手続きに関して言えば、政府が、昨年5月、人事院勧告によらない給与引き下げを提案し、労使交渉が行われた。しかし、交渉というものの、労働組合の対抗手段であるストライキ権は認めず、仲裁・調停など紛争調整制度もなく、労働基本権の保障を規定した憲法、国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を定めた国公法に反する手続だった。国公連合と合意したことをもって給与引き下げの閣議決定を強行したが、国公連合は対象国家公務員の過半数には到底およばず、決定の正当性が問われてきた。その上、今回、政府与党である民主党が、給与引き下げをあくまで強行しようと、自民党・公明党提出法案をほとんど丸呑みし、議員立法によって法成立を図った。憲法が想定している労働基本権を保障した上での労使交渉による労働条件決定、国家公務員法が規定している労働基本権制約の下での第三者機関・人事院の勧告に基づく勤務条件決定のいずれでもなく、労使関係の当事者でない議員立法による勤務条件決定は、労使の信頼関係を著しく揺るがし、職員の士気を低下させたと言わなければならない。
3.今回の措置の内容の問題点について言えば、平均7.8%もの給与引き下げは、ローン返済、子どもの教育費、老後の備えなど国家公務員の生活設計に深刻なダメージを与えるものである。にもかかわらず、防衛省職員を除き、救援、復旧、復興に当たっている職員、被災した職員への配慮すらなされていない、極めて冷酷なものと言わざるを得ない。
4.給与引き下げの連鎖を引き起こすという点について言えば、地方公務員については法の付則で、独立行政法人職員については閣議決定等で国の機関に働く国家公務員と同様の措置を行うよう、事実上強制することを表明している。国家公務員給与は、地方公務員、独法職員だけでなく民間労働者も含め600万を超える労働者の賃金に直接的な影響を与える。この点では、国公連合が加入する連合も、事務局長談話で、中小・地場企業の労使交渉への悪影響の懸念や便乗賃下げへの警戒を表明していることを指摘したい。
5.大震災からの復興の妨げになると言う点では、国家公務員給与の引き下げの影響について、全労連のシンクタンク、労働運動総合研究所(労働総研)の試算を見ると明瞭である。この試算では、給与を10%引き下げた場合で、625万8千人に影響を与えることから、家計収入が3兆4710億円減少し、それにより家計支出は2兆5937億円、国内生産は5兆8472億円、税収は5401億円減少すると指摘している。政府、民主党、自民党、公明党は、復興財源の捻出を今回の措置の理由としているが、復興財源を確保するために、今一番必要なことは、景気を回復し、税収を拡大することだ。そのためには、国内総生産の6割近くを占める民間最終消費を増やすため、雇用、賃金を維持、改善することが必要だ。
6.しかし、今回の措置は、それに逆行するものと指摘せざるをえない。大震災からの早期の復旧、復興を望む立場で、今回の措置を是認する声が国民の間で少なくなく、職員の中にも是認する声がある。しかし、素直に考えれば、公務員の給与として支出するなら貯蓄に回る分以外が最終消費に回るが、給与引き下げ分を公共事業に回したとしても労働者の賃金以外に様々な費用、利益に回り、どうしても最終消費に回る分は少なくなり、景気浮揚効果は減少する。復興財源の確保のためには、マイナスの影響が強いものを削るのでなく、憲法違反との指摘もある政党助成金など予算のムダを削ること、国民、大企業を問わずその視力に応じた負担をすることが必要だ。
7.今、緊急に必要なのは、便乗賃下げを許さないこと、雇用、賃金を改善し、景気を回復することである。そうすれば、日銀の事実上のインフレターゲット政策もあり、やや回復基調になっている経済が、本格的な回復軌道に乗り、税収が確保されていくだろう。大企業が、国民的視点にたって、その力に応じた雇用、賃金の改善という適正な負担をすることが強く求められる。全経済は、全労連、国公労連のこうした取り組みに積極的に参加していく。
8.一方、手続き的にも、内容的にも、その悪影響という点でも問題ばかりの今回の措置を撤回させるため、国公労連は裁判に訴えることを提起している。全経済は、この提起を真摯に受け止め、国公労連の一員として参画していく方針である。
9.給与引き下げにとどまらず、新規採用の7割抑制など、公務員に犠牲を強いる動きが強まっている。こうした動きには、事実に基づかないものも含め、公務員への風当たりを強める世論の力も預かっている。しかし、国民と公務員の分断は、双方に不幸をもたらすことは、人勧凍結とその影響など、これまでの経過が教えている。分断を乗り越え、公務、民間の労働者、国民の連帯を回復し、要求実現を図ろうとする国公労連の取り組みに、全経済もその一員として参加していくことを表明するものである。
以上